東京高等裁判所 昭和50年(ネ)748号 判決
控訴人らは、昭和四四年一一月一七日の欠勤については、事前に依頼した友人がその旨を上司に届出をなし、さらに控訴人足立は右同日の分について事前に年次有給休暇の届出をしており、同控訴人のその余の欠勤分および控訴人安島、同加沢の同年一二月八日までの欠勤分については、翌九日出勤した際それぞれ直ちにタイムカードに年次有給休暇または欠勤の届出を記入し(ただし、一一月分のタイムカードはすでに本社に引きあげられていたため記入できなかった)、所定の手続をとっているから、控訴人らには就業規則三九条一号所定の「正当な理由なしに無断欠勤連続一四日以上に及んだとき」に該当する懲戒事由はないと主張するので、この点を判断する。
≪証拠≫によると、被控訴会社の従業員が年次有給休暇を受けようとする場合、または病気その他やむを得ない事由によって欠勤しようとする場合には、タイムカードにその事由ならびに休暇日・欠勤予定日数を明記し、所属上長に事前に願出・届出て承認を得ることを要し、もし事前に願出・届出の暇がないときは、電話その他により速かに申出をなし、事後遅滞なく届出をなし、所属上長の承認を得ることを要し、とくに年次有給休暇の事後届出が不当に延引したときは受け付けないことがあるものとされていること(就業規則一九条・二五条参照)、そして、所属上長において右年次有給休暇願出・欠勤届出が正当な事由によるものと認めるときは、これを承認していることが認められ、これに反する証拠はない。ところが、控訴人らがその主張にかかる年次有給休暇ないし欠勤につき所属上長より承認をえたことを認めるのに足りる証拠はないから、控訴人らの前記欠勤(ただし、後述するとおり控訴人足立の昭和四四年一一月一七日の年次有給休暇を除く)は所定の手続を履践しない無断欠勤であるというほかはない。なお、右のように解される以上、控訴人らが弁護士を通じてその主張のような欠勤届を提出したことをもって、その欠勤を正当化しえないことも明らかである。
控訴人足立の昭和四四年一一月一七日の年次有給休暇の届出についてみるのに、≪証拠≫によると、同控訴人は事前に右一七日を年次有給休暇に充てる旨をタイムカードに記載したが、所属上長の承認をえていないことが認められる。ところで、労働者が年次有給休暇を受けるに際しては、事前に使用者にその旨の意思表示をすれば足り、使用者の承認ないし同意を要しないものと解すべきところ、控訴人足立が右のように事前に前記一七日を年次有給休暇に充てる旨をタイムカードに記載し被控訴人において了知しうる状態においた以上、その旨の意思表示があったものというべきであるから、右一七日は同控訴人の年次有給休暇に充てられており、これを無断欠勤とみることはできない。しかしながら、控訴人足立の前記一七日の欠勤が年次有給休暇として扱われるとしても、同控訴人の無断欠勤連続は一八日に及ぶのであり、その事実が就業規則三九条一号所定の懲戒事由に該当することに格別の影響を与えるものではない。
(安倍 岡垣 唐松)